このHPは、<グローバル×月経(生理)×文化人類学>という観点で、私たち研究メンバーの活動・研究成果を紹介いたします。
私たち研究チームは、科学研究費によって『グローバルなアジェンダとなった月経のローカルな状況の比較研究』(2017年4月~2020年3月)を実施しました。また、現在は国立民族学博物館(みんぱく)共同研究プロジェクト『月経をめぐる国際開発の影響の比較研究―ジェンダーおよび医療化の視点から』(2020年10月~2024年4月)を、新メンバーを加えて実施しています。
さらに、グローバルな動向をふまえて、今後の日本の月経についての教育について検討する研究『現代日本の文脈に即した月経に関する教育の在り方の検討』(2022年4月~2026年3月、科学研究費)に現在取り組んでおり、このページに活動をまとめています。
一見非常にプライベートでこれまであまり公に語られることのなかった月経(生理)について、近年 国際社会では「解決すべき課題」として認識され始めています。特に、発展途上国と言われる地域において月経の問題は、女子の就学率の向上、ジェンダー平等、水・ 衛生環境の向上などと深くかかわっていると考えられ、開発介入の対象とされはじめているのです。月経は、 たしかに女性の身体にかかわる普遍性を持っています。その一方で、月経の捉えられ方、対処のされ方は、地域ごとに非常にローカルな慣習があり、月経に対してケガレ感が強く、隠された領域であることが多々あります。
そこで私たちの研究チームでは、各メンバーがこれまで長年フィールドワークを行ってきた地域において、グローバルな課題に対面する月経についてローカルな現状・リアリティを捉えたいと思います。国際的なアジェンダとして月経対処の政策や新しいプログラムが策定されることによる影響や配慮されるべき点を考察することも目指したいと考えます。
国際社会、とくに国際協力(開発支援)の場で女性の月経対処は重要な開発課題として浮上しています。MHM は、menstrual hygiene management(月経衛生対処)の略で、以下のように定義されます。
「女性と思春期の女子が経血を吸収する清潔な生理用品を使い、それをプライバシーが確保される空間で月経期間中に必要なだけ交換でき、石鹸と水で必要な時に体を洗い、使用済みの生理用品を廃棄するための設備にアクセスできること。」(WHO & UNICEF 2012, p.16)
さらにUNESCO(2014)は少女や女性をとりまく環境にも目を向け、MHMには以下のことを整えていくことが必要だとしています。
月経対処の重要性を社会や女性に啓発するため、5月28日をMenstrual Hygiene Day (月経衛生の日)に定めようという動きもあります。平均的な月経の継続日数が5日であり、平均的な月経周期が28日であることから5月28日という日が選ばれました。
月経は、妊娠中・産褥期・授乳期を除けば生殖可能な期間(初経から閉経まで)の全体を通してみられる人類(生物学的な女性)共通の生理現象です。しかし、月経は単なる身体的な現象ではなく、女性たちは、月経に与えられるそれぞれの地域の文化的・社会的な価値観に沿うかたちで月経を経験します。
文化、社会環境、経済的状況などによって異なる事柄、考慮する必要のある事柄を列挙してみます。